商品詳細
注)当店で導入している濾過装置を設けないタツノオトシゴの高密度飼育はタツノオトシゴ固有のFlame Cone Cells(火炎錐細胞)の特性を利用した上皮バクテリア定着に注目した「タツノオトシゴの生物濾材化」による養殖モデルであり、また育児嚢や棘の進化の理由となったと考えるスキンフローラ免疫選択説への追求プロジェクトであり他種魚へ応用できる技術ではありません。
水産養殖大国中国に於いて5大ないし7大益菌として抗生物質に替わり導入されている細菌群から特にポピュラーな枯草芽胞桿菌、乳酸菌、酪酸菌を用意しました。
淡水魚、海水魚のみならずバナメイエビ養殖には欠かせない存在となっており、食用ガエル養殖にも広く使われています。
粉体状なのでオンデマンドに「激活」、またはそのままプロバイオティクス添加剤として使用できます。
日本でも安全性や有効性が確認されサプリメントとして摂取している方も多く馴染み深い細菌ではないでしょうか。
枯草芽胞細菌(Bacillus subtilis)は日本では枯草菌と呼ばれ、納豆菌(Bacillus subtilis natto)は枯草菌のなかでも粘り(グルタミン酸、フラクタン)を生産する菌株となります。
水産用として使われる枯草芽胞桿菌は低温耐性のある株が使われます。
至適温度は35℃と納豆菌の至適温度40℃~45℃に対し5℃~10℃低くなっています。
粘りは生産しません。
酪酸菌としては中国では丁酸梭菌(Clostridium butyricum)、酪丁酸梭菌(Clostridium tyrobutyricum)が有名です。
丁酸梭菌は動物の腸内に存在し安全性が確認され、酪丁酸梭菌はチーズ(乳中)から分離され添加剤としては効果が未確認であるということから国が定める「飼料及び飼料添加剤管理条例」には丁酸梭菌が登録され流通しています。
正しくは丁酸梭菌とするべきですが便宜上酪酸菌としています。
1933年に千葉医科大学(現 千葉大学医学部)の宮入 近治博士が初めて発見した酪酸菌(Clostridium butyricum MIYAIRI)は、宮入菌とも呼ばれています。
いずれも水質改善と飼料添加物としての用途があります。
益菌として使われるものには分解による水質改善、代謝産物による免疫力向上、成長促進、消化吸収促進、抗菌作用など一律の効果が見られます。
菌ごとの特性を捉え、組み合わせや適正な接種タイミングを調整することが重要です。
例えばアクア業界で水質浄化バクテリアとして最も有名で最も流通している光合成細菌(紅色非硫黄細菌)の培養には高分子化合物である糖類は使わず酢酸ナトリウムなどを使います。
これは光合成細菌が炭素源に低分子有機酸を好むためであり光合成細菌を十分に活用するには高分子有機物の分解が得意な枯草芽胞桿菌を先に接種すると効果が上がります。
当店で扱う細菌としては光合成細菌の担当分野を乳酸菌に置き換えることができ、中国水産業界でも枯草芽胞桿菌と乳酸菌の組み合わせが定着しています。
更に光合成細菌も併用すると乳酸菌による酸性化と光合成細菌によるアルカリ化の中和作用でph変動が起こりにくくなります。
光合成細菌は光合成により水域の二酸化炭素を固定しますので炭素源を巡る競合を考慮する必要はありません。
乳酸菌は真空・冷蔵保存されたハムなど食品の腐敗変敗細菌としても知られているように水産に於いて重要な低温耐性というメリットがあります。
枯草芽胞桿菌と乳酸菌の組み合わせは腸内プロバイオティクスの観点からも良い組み合わせと言えます。
枯草芽胞桿菌は増殖時に大量の酸素を消費しますので腸管内の遊離酸素を消費し、有益な嫌気性細菌(乳酸菌など)の増殖を促進すると同時に他の病原性細菌(ビブリオ、大腸菌など)の増殖を間接的に阻害します。
酪酸菌は偏性嫌気性という性質上アクアリウムでは水質浄化として活用できるシーンが少なく餌の添加剤として使用することが多くなると思います。
腸内でも酸素の少ない後腸(人間で言うと大腸)に存在しています。
乳酸菌との違いを腸内プロバイオティクスの視点から捉えると良いと思います。
1.酪酸菌は腸内滞在時間が最長72時間と長いですが、乳酸菌は腸内の滞在時間が6~8時間と短くなります
2.酪酸菌は酪酸により腸粘膜を修復し、乳酸菌は主に腸内環境を改善します
3.酪酸菌は長期間使用できますが乳酸菌は連続投与すると便がに粘り気が出る、腸壁が薄くなる可能性があり3on3off(3日投与3日休む)など断続使用が良いです
4. 酪酸菌は薬剤耐性があり一部の抗生物質と併用できますが、乳酸菌を使用する場合は抗生物質を使えません
5. 酪酸菌は芽胞(内⽣胞⼦)を形成し環境に対する耐性が優れていますが、乳酸菌は芽胞を生成せず環境に対する耐性が酪酸菌より弱くなります
現在水産養殖における各菌の作用について論文など読みながらエビデンスを取る作業をしていますが、まだ研究されていない分野も多く、他の微生物や藻類といった外因性要因に影響を受ける場合もあります。
例えば食品の亜硝酸塩除去に関しては研究や応用が進んでいる分野と言えますが乳酸菌を使ったキムチの亜硝酸塩分解について研究をした湖北工業大学の資料によると酸分解、バクテリオシンによる硝酸還元菌の増殖抑制、亜硝酸レダクターゼによる酵素分解が発酵過程(ph変化)に応じ作用します。
また実験室から離れ生態系として見た場合水域が改善されることで藻類や植物プランクトンが増え亜硝酸塩を取り込むことにもつながります。
また菌株の違いによっても効果が変わります。
細菌は拮抗作用による菌同士の殺し合いに勝つため抗生物質を生産しますが攻撃と防御は表裏一体となり耐性菌や変異株の出現は避けられません。
常に効率的なスクリーニングが行われるかどうかはわかりません。
最も重要なことは動植物とその周囲環境を含めた環境プロバイオティクスの概念により益菌の占有率を高めることではないかと思います。
このことは栄養的占有と空間的占有で完成します。
その点に於いては増殖が速く、耐酸化、耐圧、耐高温、耐酸・耐アルカリに優れ「細菌の王様」とも呼ばれることもある枯草芽胞桿菌を中心に構築していくと良いと考えます。
水産養殖における枯草芽胞桿菌の作用
1.残留餌、糞便などの有機物を迅速に分解(高分子)
2.アンモニア窒素,亜硝酸塩,硝酸塩の分解
3.水域の活力と自浄能力を高める
4.有害菌と有害藻の抑制
5.腸内環境を改善し、消化吸収を促進する
水産養殖における乳酸菌の作用
1.PH値、アンモニア窒素を下げる
2.腸内細菌叢を調整し、腸の免疫力を高める
消化機能の向上
3.残餌、糞便などの有機物を分解する
4.体の免疫応答を活性化し、体の抗病能力を高める
水産養殖における酪酸菌の作用
1.代謝産物により腸粘膜を修復し、腸内の善玉菌の増殖を促進する
2.消化酵素を分泌し、飼料中の抗栄養因子を分解する
体の栄養素の消化吸収を促進する
3.水体中の有機物を分解し、有害菌の繁殖を抑制する
激活方法
激活とは「菌起こし」のことを言います。
粉体状の菌10gに対し水(脱塩素水)40kgと黒糖(サトウキビ100%)2kgで激活した菌液を20ムーに散布する例があります。
1ムーが666.667㎡(百度百科より)に相当しますので666.667㎡×20 ≒ 13,333㎡となります。
これはオリンピックサイズ・プール(50m×25m = 1,250㎡)約10面に相当しますのでエンドユーザーが使用しやすいようにスケールダウンさせる必要があります。
水40kgに対し糖度75~86度の黒糖(度独立行政法人 農畜産業振興機構より)2kgの比率は5%ブドウ糖液(等張液)に近くなりますので「砂糖漬け保存の原理」に沿って考えても問題はありません。
また、中国の水産現場では菌量を多くして激活時間を短縮する方法を採用することが多いように思います。
以下に当店での激活方法を紹介します。
【用意するもの】
清潔な容器(可能な限り殺菌処理)
種菌を0.1mlサジに1~2杯
黒糖(サトウキビ100%)
脱塩素水
※黒糖は水500mlの時2.5g、1,000mlの時5gとなります
菌種 | 好気・嫌気 | 酸素利用 | 至適温度 | 激活目安 | 確認方法 |
枯草芽胞桿菌 | 好気性 | 要送気 | 35℃ | 2日 | 顕微鏡、生産物の堆積量の増加 |
乳酸菌 | 通性嫌気性 | 密閉 | 20℃~40℃まで | 4日 | ph4目安 |
酪酸菌 | 偏性嫌気性 | 完全密閉 | 35℃ | 4日 | ph5目安 |
通気嫌気性は多少空気の層があっても可、但し増殖速度の緩慢化の可能性も有り
偏性嫌気性は完全密閉、使用する水の溶存酸素の影響を受ける可能性も有り